シンデレラガールズのOP原画をじっくり見る

動く!原画セレクション! 「アイドルマスター シンデレラガールズ」オープニング - YouTube


前置き(読み飛ばしてOK)

今回公開されたのは原画を撮影したもの。アニメ作画の進行段階は、絵コンテ→レイアウト→ラフ原画→原画→動画という順が一般的だが、これらの段階で撮影された映像を「線撮」といい、原画の段階のものを「原撮」と呼ぶ。こうした映像は、途中経過の確認や、アフレコに完成映像が間に合わなかった場合に使用される。*1

原画は動きのキーとなるものであり、その間を埋めるのが動画である。秒間の原画や動画の枚数が増えるほど「ぬるぬる」と滑らかに動いて見えるが、その分、動きのケレン味は減ったりする。原画はカットごとに担当がいて、動きの付け方や絵柄に、担当の個性が出たり出なかったり(作画監督に直されたり)する。原画の人は単に絵を描くだけでなく、原画の間にどのように動画を挟むか(中割)の指示をタイムシートに記載する。*2

上に空いている穴は「タップ穴」といって、原画をまとめる際に突起を通す穴。
原画には黒い線と色の線の2種類がある。色のついている方は「色トレス」といい、影色など色の境界を示すために使われる。頬の丸もこれ。

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杏の原画に手書きでF4の文字がみえる。これはFセルの4枚目の原画を意味する。

かな子と智絵里が画面に入るフレームにはG4の文字。

奥行方向に多くの物体があるカットでは、それぞれレイヤーに分けて作画するのが一般的。Aから命名するので、少なくともこのカットは7枚以上のレイヤーで構成されている。

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美波の衣装をスタイリストさんが直すカット。
美波のセクシーさに目が行きがちだが、スタイリストさんの指先が細かく動いている。


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未央ときらりの腕のモーションブラーが作画されている。特効でぶれ効果を付けたのではなく、原画の段階でぶれた状態を描いている。


身体動作の後に、慣性効果で服のたるみが生じている。

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コンテでは楓さんの右に小梅ちゃんがいたが、ここでは画面内にいない。完成映像では結局映っている。
原画で描かれていなかったのかと思えばそうではなく、BD特典の冊子にある原画では、きちんと描かれている。画面のバランスに何度か迷ったのだろう。

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いわば「シンデレラがガラスの靴を履く」重要なカット。
「細かく中割り」の指示が書き込まれている。枚数を多くすることで、丁寧に重みを増す。

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「10cmの背伸び」のカット。少しだけ足が沈み込んでから↓かかとを上げて↑少し戻る↓。
予備動作と予後動作?(揺れ戻し?)であり、アニメーションの基本テクニック。

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ニュージェネの3人が階段を駆け上がっていくカット。担当は植村淳さん。*3
走る時の微妙な左右の重心のぶれが凛の髪の揺れに反映されている。

上は1/2倍速。

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原画ではこの智絵里の堂々とした表情がクッキリとわかる。担当Pでなくとも感涙もの。

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卯月の天使っぷりがいかんなく発揮されるカット。担当は河野恵美さん。*4
河野さんは2周年PVや1話の最重要カットのひとつを担当している方。髪をエフェクト作画(ex.煙, 水)のように描くのが特徴。


上の2枚は連続したフレームである。静止画では一見上手く繋がらないようだが、それが映像では躍動感となる。これも原画の醍醐味のひとつ。
髪の描写で判定すると、以下のカットも河野さん。

2周年記念PV

1話

参考:

河野さんの仕事に興味を持った方はこちらのtumblrをチェック。
WEBアニメスタイル | 板垣伸のいきあたりバッタリ!第156回 メイキング・オブ・『はなまる幼稚園』ED(その2)
作画@wiki - 河野恵美
アニマスでも印象的なカットをいくつも担当している。

エンドクレジット


"撮影:A-1 Pictures 高円寺スタジオ撮影ルーム" とクレジットされている。
スタジオ・ワンパックの作品履歴を見る限りでは、撮影部門だけでなく、制作がこちらで行われているようだ。
2011年のアニマスは荻スタ(=阿佐ヶ谷スタジオ?)で制作されていた。2012年に高円寺スタジオが出来たので、こちらに移ったのだろう。

おわりに

長々と書いてきたが、別に「神作画」というわけではない。しかし、見るほどにスタッフの方々の熱が伝わってくるので書かずにはいられなかった。